日本国憲法第92条にこうあります。
【地方自治の本旨の確保】
第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。
長い間、地方自治に携わってきた者として、もう一度、基本的なことについて、考えてみたいと思います。
「地方自治の本旨」それって何のことで、何が大事なのでしょうか? 少し考えてみます。
本旨とは
本旨という言葉をネットで調べてみると、「本来の趣旨」とありました。さもあらんという感じですね。
本来の趣旨なのでしょうが、何が本来なのでしょうか? どんな趣旨なのでしょう? 少し深く学ぶために衆議院憲法審査会事務局の資料「国と地方のあり方(地方自治等)に関する資料」を見てみました。

地方自治の本旨
衆議院憲法審査会の資料には、以下のように解説がされていました。
92条は、地方自治の基本原則を明らかにした地方自治の総則的規定である。
92条の「地方自治の本旨」の意味について、憲法は具体的にその内容を規定していないが、一般には、住民自治と団体自治の2つの原則によって構成されているものとされる。
さらに、上記の「住民自治」及び「団体自治」に関して以下のような記述がありました。
「住民自治」及び「団体自治」について
「地方自治の本旨」は、通常、中央政府から独立した地方公共団体が地方の事務を処理すること「団体自治」と、事務処理の決定過程に住民が参加すべきこと「住民自治」を意味するといわれる。
団体自治は、地方自治の分権的側面を、住民自治が地方自治の民主主義的側面を、それぞれ示す理念である。(長谷部恭男「憲法第6版」より)
さらにまた、国会での政府答弁では以下のような説明もあります。
「地方自治の本旨」の意義について
第154回国会衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会(平成14年5月29日)
津野政府特別保佐人(内閣法制局長官)…….憲法92条に規定する地方自治の本旨といいますのは、地方公共団体の運営は原則として住民自身の責任に於いて自らの手で行うという住民自治の原則と、それから、国から独立した地方公共団体の存在を認め、これに地方の行政を自主的に処理させると言う団体自治の原則を共に実現するという地方自治の原則を表したものであります。

現場感覚
地方公共団体の現場で、事務をやってきたものの感覚としては、政府答弁のほうが近いのかもしれません。
学問的には、そうなのだろうと思いますが、長谷部先生の「事務処理の決定過程に住民が参加すべきこと(住民自治)を意味する。」というニュアンスとは若干違うような気がします。
私自身、市役所の職員として働きながら、結構、地域活動を行ってきており、集落の行事に参加する機会が多かったです。
そのため、そういう感覚が出ているのかもしれません。
まとめ
地方自治という語感については、「団体自治」のニュアンスの方を強く感じます。でも大切なのは「住民自治」の方なのだろうなという思いもあります。
「自分たちの地域は、自分たちで作るんだ。」という気概をどれだけの人が持っているのかは疑問ですが、その心構えが大切なのだろうなと思います。
なおかつ、そういった気持ちを持てるように「団体自治」の仕組みについても工夫をする努力を続けることが大切なのだろうなと思います。
私は、これまで、市町村合併の担当も経験してきました。また、現在進行中の大きなNIMBY問題にも携わってきました。大きな問題になればなるほど、この「地方自治の本旨」について考えることが多くなります。
地域での集落活動の積み上げは、私の「地方自治の本旨」への感覚を研いでくれているというふうに感じています。
これから地方自治を担う後輩には、ぜひ、現場で感覚を研ぎながら、「地方自治の本旨」という怪物に挑戦していってほしいと思います。
I thought about the purpose of local autonomy. Resident autonomy and group autonomy. Both are important. You should suppress the basics. And I want my juniors to sharpen their sense of autonomy in the field such as villages. Tips on “the principle of local autonomy” have fallen into the field. It’s true.
