補助金、交付金の「トリセツ」。副作用に注意。

生活

 これまで、行財政改革のことを書くことが多かったような気がしますが、今日は、補助金、交付金のことを書いてみたいと思います。

 私もたくさんの補助金、交付金に関与してきました。交付する側で、制度を作ったこともありますし、補助金や交付金を受ける側として、申請に関与したこともあります。

 申請書を作成するだけでなく、いろんなタイミングを活用することや、どんなところに相談に行ったらいいかなどもある程度わかります。

 書いてはいけないことは書きませんが、書けるだけ書いてみたいと思います。

 結論からいうと、補助金や交付金には功罪があります。その扱い方を間違えると関係する人たちの人間関係を悪くしたり、次の取り組みがうまくいかなかくなったりします。

 いただけるものは、いただいた方がいいと思いがちですが、麻薬のようなもので、だんだんそういったことに慣れてしまうと、それに依存するような体質になってしまいます。

 要注意です。反対に考えられがちですが、100%の交付金など、その最たるものです。私も現役時代、100%補助のものを扱ったことはありますが、あまり、いい思い出はありません。

 それでは、補助金、交付金について書いてみます。

補助金、交付金について

 補助金に関しては、国が交付するものと公共団体団体が交付するものがあります。国が交付する補助金に関しては、法令上の定義はあまり明確ではありませんが、通常は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)」によって規制がされています。

 その補助金適正化法では、関係者の責務として、3条で以下のような規定がなされています。責務ということで規定はされていますが、やはり、少し漠然とした書き方です。

(関係者の責務)第三条 各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従つて公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。 補助事業者等及び間接補助事業者等は、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し、法令の定及び補助金等の交付の目的又は間接補助金等の交付若しくは融通の目的に従つて誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うように努めなければならない。

 4条では他の法令との関係が規定されていますが、「他の法令で決めたもの以外は、これに従ってね。」と書かれているくらいで、他の法令に投げてしまっているような感じです。

 一方で、地方公共団体が執行する補助金に関しては、地方自治法で規定されています。以下が地方自治法上の規定です。

(寄附又は補助)第二百三十二条の二 普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。

 地方自治法の規定もそれほど、厳密に規定しているわけではないですね。しかし、「公益上必要がある場合」と規定がされています。

 この「公益」をどう解釈するかで、制度設計が変わりますが、一般的に、政治の世界に近くなればなるほど解釈は広くなるような気がします。

過去にあった大型の補助金、交付金

 次に、過去に大きな政治的な流れとしてに作られた制度を見てみたいと思います。個々の補助金というより、時代背景があって地方公共団体に交付されたものです。

ふるさと創生

 もうだいぶ時間が経過してしまいましたので、現役の地方公務員の中には、「ふるさと創生」なるものを知らない人も多いかと思います。

 ふるさと創生は、昭和62年に就任した竹下首相が提唱した考え方で、「ものの豊かさだけでなく、心の豊かさを重視し、日本人が日本人としてしっかりとした生活と活動の本拠を持つ世の中を築こう」という考え方で行われた施策です。

 考え方としては、とてもいいと思います。でも、実際に行われたのは、全国の市町村に1億円ずつ、均等に配ろうというものが中心でした。

 当時は、単に1億円もらったような報道のされ方をしましたが、実際には、補助金でも補助金的な交付金でもなく、地方交付税の配分を決める基準財政需要額の算定に1億円分を入れるという仕組みでした。

 言わせれいただければ、地方交付税の財源保障機能の方を、過度に適用し配分した仕組みです。当時もばらまきだと言って一部から批判されました。

 当時は、自然税収の伸びが単年度で約7兆円あったようなのでそんなことができたのでしょう。でも、今では、そのお金はどこに消えたのやらとい感じの自治体が多いようです。

民主党政権時代

 補助金や交付金に関しては、2009年から2012年にかけての民主党政権の時代にも特徴的な動きがありました。

 「国から地方への「ひもつき補助金」を廃止し、基本的に地方が自由に使える一括交付金として交付する。義務教育・社会保障の必要額は確保する(2009)」として行われた、「ひも付き補助金の一括交付金化」です。

 この頃の、秋口以降の臨時国会での国の補正予算では、臨時の交付金事業が作られ、短期間の間に事業計画を策定して、申請すれば、全額交付金がもらえるという状況となりました。

 当時、私は財政を受け持っていたので、大変助かるなと思いましたが、こんなことをしていて、本当に国がもつのかなという思いの方が強かったのを覚えています。

 現在も国は膨大な借金があります。当時の民主党政権にも一部責任があるのではないでしょうか。また、交付されたお金は、ほとんどが必要な修繕的な事業に回した覚えがあります。

 必要な事業を先に整理したことによって、私の自治体の財政再建の加速にはなったと思います。そういった意味ではありがたい財源でした。

地方創生

 「地方創生」に関しては、現在も進行中の施策です。評価は、まだまだ後になるのかもしれませんが、現在感じたままを書いて見たいと思います。

 地方創生は、もともと2014年、第2次安倍内閣の発足の時に、「東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げること」を目的とした一連の施策です。

 この時も、担当部署にいましたので、すぐに地方創生の計画作りに取り組んだことを覚えています。そして、この時にもいわゆる交付金が配布され、そのための事業計画作りに職員に頑張ってもらいました。

 ところが今では、なんだかその意義を語るというよりも、「新型コロナウイルス感染症対策」の施策のようになっています。

 違う意味で、地方への人の流れは出てきたように思いますが、最初の頃とは随分変わったなーと感じてしまいます。感染症対策として、こればかりは仕方がないとは思いますが…。

補助金、交付金の功罪

 過去に主に政治的な流れの中から出てきた、交付金の類について書いてみました。現実的には、補助金、交付金ではないものをありますが、そこはご勘弁ください。

 全然苦労もしなくて、お金をいただくのは楽なものですし、正直助かります。しかし、自治体で自治を本当に進めようとすると、そのお金が邪魔をする場合があります。

 それは以下のような場合によく起こります。

  • 物が欲しいのが先にあって、無理矢理ソフト事業を組み合わせる。
  • やたらと謝金を関係者に配布する。
  • 安易に、割安な補助制度や商品券制度を作成する。
  • 急ぐ必要もない事業を簡単にやってしまう。
  • etc

 上記のようなことをやってしまうと、後になって後悔することになります。お金が配布されないと人が動かなくなりますし、一見無駄な制度をやめることができなくなります。

 会計検査院検査で事業理由が説明できなくなり、補助金返還を求められることすらあります。

まとめ

 補助金、交付金について書いてみました。あげたものはそれぞれ時代背景もありますし、簡単にその功罪をいうことは難しいのかもしれません。

 私も関係して感じることですが、その時代時代では、関係者は、最もいいやり方を選択したつもりで、施策を進めているものです。後になって、色々言われますが、その時には一生懸命考えた施策がほとんです。

 でも、補助金、交付金は有利であればあるほど、その副作用は大きくなりますので、利用する方がしっかり考えて取り組んで欲しいと思います。

 強烈な薬に副作用はつきものです。

I wrote about subsidies and grants. Strong drugs have side effects. Be careful when handling it. The more advantageous the subsidy, such as 100% subsidy, the more difficult it is to handle subsidies and grants. If you proceed with the business without understanding that, you will fail due to human relationships.

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